【基礎編 vol.3】 その水、ちょっと待った! パックテストがうまく測れない5つの理由と解決ワザ

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パックテストは、チューブの先端を引き抜いて水を吸い込むだけで、誰でも簡単に利用できる水質検査キットです。
ですが……いくら便利とはいえ、どんな水でもそのまま測れる「万能のアイテム」というわけではありません。
「思ったような色が出ない」 「数値があやしい気がする」
そんなふうに感じるとき、実はパックテストが少し苦手とする「落とし穴」にハマっているのかも。

そもそもパックテストは「1本のチューブで1つの成分しか測れない」という一途な性格です。
「何が溶けているか分からないけど、とりあえず測って!」というのは一番の苦手分野。「工場でこの薬品を使っているから、これが漏れていないか調べよう」と、ターゲットを絞り込むのが成功の秘訣です。

今回のコラムでは、現場で起こりがちな「5つの失敗あるある事例」と、「こうすれば測れる!」という具体的な解決テクニックをわかりやすくご紹介します!
パックテストを有効にご活用いただくためのヒントにしてみてください。

コラムを読む前に:知っておきたい3つの用語

本題に入る前に、コラム内でよく出てくる言葉についてご説明します。

一般の生活ではあまり耳にしない言葉かもしれませんが、分析や検査の現場では標準的に使われる用語ですので、ぜひこの機会に覚えてみてください。
・  検水(けんすい): 「調べたい水」のこと。工場排水、川の水、身近な水たまりなど、測ろうとして採取した「サンプルの水」を指します。

試料(しりょう):「調べたいモノ(材料)」のこと。「検水」が調べたい水を指すのに対し、「試料」は水に限らず、土壌や食品など検査の対象となるモノ全般を広く指す言葉です。

・  純水(じゅんすい): 不純物が取り除かれたキレイな水のこと。水道水には塩素などの成分が含まれているため、検水をうすめる(希釈する)ときには「純水(または精製水)」を使います。
「じゃあ、どうやって準備すればいいの?」と思いますよね。ドラッグストアやホームセンターで手軽に購入できます。水道水やミネラルウォーターとは別物なので要注意です!

[事例1]色がジャマをする!「濁りや色がついている水」

▸具体的な対象物
泥水、濁った排水、ジュース、お茶、ワイン、色の濃いダシ汁 など

パックテストは、水と試薬が反応して生まれた色を「標準色」と見比べて判定します。そのため、元々の検水に赤や茶色などの色がついていたり、泥水のように濁っていたりすると、正しい色の判定の邪魔になってしまいます。
たとえるなら、色のついた紙に、別の色の絵の具を塗るような状態。
元々の紙(検水)の色に引っ張られて、絵の具本来の色(試薬に反応した色)が見えなくなってしまうのです。
また、「濁り」と「着色」では、少し厄介さの性質が異なります。

  • 濁りの場合:
    濁りの原因となる微粒子が色の見え方を邪魔するだけでなく、成分によっては試薬の発色反応そのものを妨害してしまうことがあります。特にデジタルパックテストでは「実際の濃度より高く判定してしまった」という誤差を防ぐためにも、濁りはそのまま吸い込まずに取り除くことが大切です。
  • 着色の場合:
    濁りと違って、着色成分は水に完全に溶け込んでいる(溶解している)ケースが多く、「静かに置いて沈殿させる」「ろ過する」といった物理的な方法では除去できません。

💡対策(これで解決!)
■うすめる(希釈):濁り・着色どちらにも有効
目的の成分がしっかり濃い場合は、純水でうすめるのが一番手軽です。ジュースやダシ汁なども、薄めることで、濁りの影響を相対的に小さくすることができます。

■静置・ろ過:濁りに有効
濁りの場合は、容器に検水を入れてしばらく静かに置いておき、濁りが底に沈んだら、上の透明な液体(上澄み)だけを静かに吸い取ります。また、市販のコーヒーフィルターや、専用のろ紙、シリンジフィルターなどを使って濁り成分を取り除いてから測定します。

■デジタル測定器を活用する:着色に有効
比較的薄い着色なら、弊社製の水質計(デジタルパックテスト、デジタルパックテスト・マルチSP)が便利です。測定前に検水由来の着色を「ゼロ(基準)」として記憶(キャンセル)する機能が搭載されているため、薄い着色水であれば測定が可能になります。

[事例2]刺激が強め!「酸性、アルカリ性が強すぎる水」

▸具体的な対象物
原液に近い洗浄剤、極端に酸性・アルカリ性に傾いた工業廃水 など

パックテストのチューブの中には、目的の成分を発色させるための「試薬」とともに、反応に最適なpH(酸性・アルカリ性の度合い)に整えるための「pH調整剤(緩衝剤)」が初めから入っています。そのため、一般的な川の水や水道水などであれば、吸い込むだけで自動的に反応しやすいpHに調整され、そのまま測定できます。

しかし、検水が極端な「強酸性」や「強アルカリ性」の場合、チューブ内のpH調整剤の能力(キャパシティ)を超えてしまい、試薬が反応するための適正なpHに引き戻すことができません。結果として、全く発色しなかったり、通常とは違うおかしな色になったりします。

💡対策(これで解決!)
検水のpHが許容範囲外の場合は、希硫酸(酸性)や希水酸化ナトリウム溶液(アルカリ性)などを少しずつ加え、あらかじめ中性付近(pH7前後)に調整するか、純水で希釈をしてから測定しましょう。
※各パックテストの使用法「注意」の欄に、発色に最適なpHと「許容される検水のpH範囲」が載っていますので、測る前にぜひチェックしてみてください。

[事例3]塩分たっぷり!「海水などのしょっぱい水」

▸具体的な対象物
海水、沿岸部の地下水、融雪剤がたっぷり混ざった水 など

海水には多量の塩類をはじめ、さまざまな成分が溶け込んでいます。海水でも問題なく測れる項目がある一方、塩類によって発色が妨げられたり、白く濁ったりして、測定が難しい項目もあります。
「海水だから全部ダメ」でも、「水だから普通に測れる」でもなく、分析項目によって相性が変わります。

💡対策(これで解決!)
使用法の「共存成分の影響」や、パックテストの項目一覧で、海水への対応可否を確認します。項目によっては、純水で2倍に希釈するといった方法で測定できる場合があります。
※ホームページの「パックテスト項目一覧」には、項目ごとの「海水対応可否」がひと目でわかる記載がありますので、測定前にご確認ください!

パックテスト項目一覧 

[事例4]「有機溶剤」はNG!

▸具体的な対象物
高濃度のアルコール、エタノール、油、シンナーなどの溶剤全般

パックテストは、水質測定用に設計しています。水以外の液体は、原則として測定できません。
「アルコールの中の成分を測りたい!」「油中の成分を見たい!」と有機溶剤を吸い込むのは、実はとってもキケン!試薬が反応しないだけでなく、溶剤の種類によってはプラスチック製のチューブが溶けたり、液体がチューブから飛び出すおそれがあります。
「とりあえず入れてみる」は、実験ではなく事故の入口です。

💡対策(これで解決!):
有機溶剤をパックテストへ直接吸い込ませないでください。
測りたい成分名、液体の種類、濃度や測定目的を整理したうえで、対応可能な分析方法を事前に確認しましょう。

■ちょっとひとこと:日本酒やワインは測れないの?
「アルコールがダメなら、お酒もNG?」と思うかもしれませんが、日本酒やワインなどは「大部分が水(水溶液)」なので、チューブが溶ける危険はなく測定可能です!(※ただし、お酒の「色」や「濁り」がジャマになる場合は、【事例1】の対策を行ってください)

[事例5]もはや液体じゃない!「固形物」

▸具体的な対象物
土壌、砂、野菜、米、お菓子などの固形物

パックテストが吸い込めるのは液体です。土や食品を、そのままチューブに入れて測ることは当然できません。しかし、「調べたい成分が水に溶け出すもの」や「中に水分を含んでいるもの」であれば、ひと工夫(前処理)することで測定できるケースがあります!
固形物の測定においては、この「前処理」こそが主役と言っても過言ではありません。

💡対策(これで解決!):
対象物の性質に合わせて、以下の2つの前処理テクニックを使い分けましょう!

■ パターンA:純水を加えて成分を溶かし出す(土壌、お米、乾き物など)
土やスナック菓子など固形物には、純水を加えてシャカシャカと振り混ぜ、成分を「水の中へ引っ張り出す(溶出させる)」方法が基本です。しばらく静置して、濁りが沈んだ後の上澄み液をパックテストで測ります。

ここで注意したいのは、パターンAで分かるのは「水に溶け出した分の量」だけです。元の固形物全部の量が分かるわけではないので、比較したい時は「固形物と水の比率」「振り混ぜる回数や時間」を毎回きっちり同じ条件にすることが、ばらつきを抑えるポイントです。

■ パターンB:すりつぶして「果汁(搾汁液)」を搾る(野菜、果物など)
「トマトやキュウリなら、すりつぶして汁を出せばいいのでは?」とお考えになるかもしれません。まさにその通りです!
水分の多い野菜や果物なら、すり鉢やミキサーなどですりつぶし、ガーゼなどでギュッと絞った「果汁(搾汁液)」を液体の検水として測ることができます。
絞りたての果汁は「色が濃い」「濁っている」「酸性が強い(トマトなど)」ことが多いので、そのままではうまく測れないことも。その場合は、【事例1】の対策を行ってください。

📝 【おまけコラム】「この水、飲める?」はパックテストでは判断できない

「湧き水や井戸水がおいしそうだけど、飲めるかどうか調べたい!」 そんなご相談をいただくことがありますが、実は「飲料可能かどうか」の最終判定は、パックテストだけではできません。

水道水質基準には、パックテストで測れる化学成分(残留塩素や鉄など)だけでなく、一般細菌や大腸菌といった「パックテストでは測れない重要な項目」が多数あります。水の飲用可否の判定や、法令に基づく正式な水質測定には、それぞれに適した検査方法を利用してください。

苦手を知ると、パックテストはもっと使いやすくなる

うまく色が出ないときは、「失敗した」と決めつける前に、検水の色、濁り、pH、塩分、液体の種類を見直してみてください。
パックテストの苦手は、限界というより、正しく使うためのヒントです。
沈める、ろ過する、薄める、中和する、前処理方法を変える。少しの工夫で、測定できるようになるケースは少なくありません。
水のクセを知ることから、ブンセキはもっと身近になります!!