【ブンセキLab.】透明な水に隠された秘密。凍結現象を利用した「硬度成分」の分離実験に挑む!―パックテストで証明する、水の中のミネラル濃度変化

ブンセキLab.

コンビニやスーパーでミネラルウォーターを買うとき、ボトルのラベルをじっくり見たことはありますか? そこには必ず「硬度(こうど)」という文字と数値が記載されています。
私たちは普段、それを「軟水(なんすい)」や「硬水(こうすい)」という言葉で呼び分けていますが、その違いがどこから生まれるのか、実際に確かめたことがある人は少ないはずです。
そこで今回は、水が固体(氷)へと変化する性質を「成分を分ける手段」として利用し、目に見えない水の中に溶けている硬度成分(ミネラル)が移動する瞬間を、確かめる実験に挑戦してみましょう!

1.液体なのに「硬い」ってどういうこと? 水の個性を決める「硬度」の正体

硬度とは、一言で言うと「水の中に、カルシウムとマグネシウムがどれくらい溶け込んでいるかを表す数値」のことです。
水はどれも透明で同じように見えますが、実は目に見えない「ミネラル」が溶け込んでいます。その中の「カルシウム」と「マグネシウム」の2つの量が多ければ多いほど、「硬度が高い」ということになります。

💡ミニ知識:言葉のつながりをスッキリ整理!
ミネラル:体や地球を構成する「無機質(五大栄養素の一つ)」の総称。食品や水に含まれる
カルシウム・マグネシウム:水や食品に溶けている代表的なミネラル
硬度成分:水質の世界における、この2つのミネラルの呼び名
硬度:水の中に「硬度成分」がどれくらい入っているかを表す数字

これら2つの含有量が少なければ「軟水」、多ければ「硬水」と呼び分けられます。世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、水1リットルに含まれるカルシウムとマグネシウムの総量を炭酸カルシウムという物質の量に換算して、以下のように分類しています。

分類硬度mg/L特徴
軟水0~60mg/L未満ミネラルが少なく、まろやかで口当たりが特徴
日本の水道水や国産の天然水の多くはこれに該当
中硬水60 〜 120 mg/L未満軟水と硬水の中間
硬水120 〜 180 mg/L未満ミネラルが豊富で、しっかりした飲みごたえ
超硬水180 mg/L以上独特の重さがあり、人によっては苦みや渋みを感じることがある

2. なぜ、日本の水は「軟水」で、ヨーロッパの水は「硬水」なのか?

なぜ地域によって水の硬度にこれほど大きな違いが生まれるのでしょう。
その理由は、雨や雪が川や地下水となって流れる「大地の成り立ち(地質)」と「川の形(地形)」にあります。

  • 日本の水が「軟水」になる理由
    日本の国土は火山が多く、玄武岩(げんぶがん)や花崗岩(かこうがん)といった硬くて水に溶けにくい岩石で地層ができています。さらに、地形が険しく、山から海までの斜面が急なため、雨や雪解けの水が一気に流れ落ちます。水が岩石と接触する時間が極めて短いため、ミネラルがあまり溶け出さないまま川や地下水となります。
  • 海外(ヨーロッパなど)の水が「硬水」になる理由
    ヨーロッパなどの大陸は、かつて海の底だった場所が隆起してできた大地が広く分布しています。地層は水に溶けやすい「石灰岩(カルシウムやマグネシウムの塊)」が中心です。さらに平坦な土地が多いため、雨水は長い時間をかけて地下を移動します。そのため、岩石と水がじっくり触れ合うことで、ミネラルがたくさん溶け込んで「硬水」になる傾向があります。

項目日本(軟水)海外(硬水)
主な地質火山性(玄武岩・花崗岩など)
⇒水に溶けにくい
海底隆起(石灰岩など)      ⇒水に溶けやすい
地形・流れ傾斜が急で、すぐ海に流れる  ⇒触れる時間が短い平坦で長く、ゆっくり流れる   ⇒触れる時間が長い
日本と海外の硬度の違い

3.実験!水分子の硬度成分を冷凍庫で仕分けしよう

では、この目に見えない「硬度(カルシウム・マグネシウム)」を、大がかりな実験装置を使わずに取り出すにはどうすればいいでしょうか。ここで用いるのが、水が凍る特性を利用した「凍結分離(凍結濃縮)」と「パックテスト」です。

水(液体)が氷(固体)へと姿を変えるとき、水分子(H2O)同士は規則正しく結晶を結びつこうとします。このとき、水分子は自分たちの結びつきを優先するため、水の中に溶けているミネラル(カルシウムやマグネシウム)を、外側へと押し出す習性を持っています。
そこで、最初の方に凍った水(外側の氷)と、まだ凍っていない水(内側の水)を比較して、ミネラルの量に違いが出るのかどうか、身近な水道水を使った実験で確かめてみましょう。

■準備するもの

・測りたい水
(水道水やミネラルウォーター)
・製氷機のトレー
・スプーン 1本
・プラコップ 2個
(「コップA」「コップB」と書いておく)
・パックテスト 全硬度 3本

■実験方法

①水道水(又はミネラルウォーター)の硬度を測定する
実験前に、使用する水道水の硬度をパックテストで測定し、数値を記録しておきます

②トレーに入れて冷やす
製氷機のトレーに水道水を入れ、冷凍庫に入れます

③「半分だけ」凍らせる
冷凍庫に入れてから約50分〜1時間ほど経過したところで、一度取り出します。すべて凍ってしまっては分離できません。「表面や周りは凍っているけれど、中を突っつくとまだ冷たい水が残っている」という状態がベストです

④氷と水に仕分ける
・スプーンを使い、凍っている表面の氷を優しくすくい取って「コップA」に入れます。(※溶けて常温になるまで待ちます)
・残ったトレーの凍っていない水を「コップB」に注ぎます。

⑤パックテストで測定する   
コップAの氷が完全に溶けたら準備完了です。コップAとコップBの水を、それぞれパックテスト全硬度で測定し、カラーシート(標準色)と見比べてみましょう。

4.目に見えないミネラルのお引越し!驚きの測定結果とサイエンス

当社で実際にこの実験を行ったところ、パックテストは驚くべき数値の違い(色の違い)を示しました。

■実験結果

  • コップA(先に凍った氷を溶かした水):10 〜 15 mg/L (硬度が低下!)
  • コップB(最後まで凍らなかった水):60 〜 70 mg/L (元の水より硬度が上昇!)※元の水道水の硬度は 50 mg/L

■なぜこうなったの?

  • コップAが「軟水」になった理由
    水分子だけが優先的に結びついて氷になったため、ミネラルがほとんど取り込まれず、元の水道水よりもはるかにミネラルの少ない氷ができたと考えられます。
  • コップBが「硬水」になった理由
    氷の結晶(先に凍った氷)から追い出されたミネラルが、まだ凍っていない残りの水に濃縮されたため、元の水道水よりも硬度が高い水に変化したと考えられます。

5. さらに一歩先へ!条件を変えた実験を考える

科学の面白いところは、一つの結果から「じゃあ、こういう場合はどうなるんだろう?」と、さらに新しい問いが生まれてくるところです。実験の条件を少し変えるだけで、水はまた新しい顔を見せてくれます。

・水のバリエーションを変える:
浄水器を通した水や、あらかじめ硬度が高い市販のミネラルウォーター(硬水)で実験したら、濃縮のされ方はどう変わるだろう?
・凍るスピードをコントロールする:
トレーをタオルや発泡スチロールで覆い、冷凍庫の中で「わざとゆっくり」凍らせてみる。水分子がゆっくり手をつなぐ時間を増やすと、コップAの硬度はもっとゼロに近づく(より完璧にミネラルを追い出せる)だろうか?
・一度沸騰させてみる:
水を一度グラグラと沸騰させ、冷ましてから凍らせると、硬度の分かれ方に変化はあるだろうか?

■日常のふとした疑問から、真実を見つける楽しさ

冷凍庫の中で起きた、目に見えない成分の分離現象。実は、実験の場を飛び出して私たちの家の中をぐるりと見渡してみると、この「姿を現した硬度成分」を、みなさんもすでに何度も目撃しているはずです。
お風呂の鏡や洗面台のガラス、蛇口などについているあの「白い斑点」

実は、あの白い汚れの正体も、今回実験で取り出した水に溶けていた硬度成分(ミネラル)なのです。水が蒸発してあとに残ったミネラルが、目に見える結晶となって現れたのがあの斑点です。
今回の実験を通して、「透明な水の中に、確かにミネラルが潜んでいるんだ」ということを、リアルに実感できたのではないでしょうか。

私たちが何気なく口にしている氷や飲み物、そして自然界の循環の中にも、今回体験した「物質の性質を利用した分離」の原理が息づいています。目に見えない世界の不思議を、身近な道具と少しの工夫で解き明かした、非常に意義深い実験となりました。

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