法改正によるアスベスト調査需要の高まり
アスベスト検出キットのリニューアルのお知らせ
弊社では、少しでもアスベスト調査に携わる実務作業者の負担の軽減や調査にかかる費用の低減を目的として昨年1月、アスベスト検出キット(DK-ASB)をリリースしましたが、今年5月より、新たな型式DK-ASB-2として、よりニーズに即した製品仕様として、リニューアル販売を開始しましたのでご紹介します。
労働安全衛生法で石綿及び石綿をその重量の0.1%を超えて含有する全ての物の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されています。日本では石綿が全面禁止になる以前に使用されていた建物で老朽化が進み、石綿含有建材を使用していた可能性のある鉄骨造・鉄筋コンクリート造の民間建築物の年間解体件数は6~7万棟、これが2028年頃にはピークの10万棟を迎えると推定されています。さらに事前調査の対象となる解体や改修工事の件数は、少なくとも年間約70~190万件とも言われています(※1)。この推定は、COVID-19の影響によって解体工事件数の減少が生じ、ピークも少し後ろ倒しになる可能性も示唆されますが、今後解体や改修工事が増えることは間違いないと言えるでしょう。
一方、解体等の工事件数の増加が見込まれることによって、工事等での石綿飛散対策の規制も強化されています。2021年4月、改正大気汚染防止法の施行によって、解体工事前の事前調査の実施や調査結果の記録と保存の義務化、さらに2022年4月からは一定規模の建築物等の解体等を行う前には事前調査の結果を都道府県等に報告する必要があります。この報告には「石綿事前調査結果報告システム」が導入されています。これによって石綿障害予防規則に基づく報告を同時に行なえるため事務負担は軽減しますが、今後の調査件数の増加は、必然的に調査や測定業務といった実務担当者の負担増加が懸念されます。さらに、2023年10月からは、この事前調査を行うために一定の知識を有する者に限られることとなり、人材確保も課題となります。
リニューアルの経緯
旧製品(DK-ASB)の仕様では、石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル[2.20版]等(※2)によって定める、材料レベル1~3のうち、有害性の高い(発じん性が高い)とされるレベル1,2の建材中のアスベストを対象としていましたが、対象外であったレベル3は、建材として一般的に幅広く使用されていたことから、広島県立総合技術研究所保健環境センターによって開発された特許技術(特許 第6781441号,第6864892号)を活用し、検出対象をレベル1~3までをカバーした製品を開発しました。
分類 | 有害性 | 建材の種類 | 本製品の判定対象 |
レベル1 | 発じん性が著しく高い (飛散性が著しく高い) | 石綿含有吹付け材 | 〇 |
レベル2 | 発じん性が比較的高い (飛散性が高い) | 石綿含有保温材 石綿含有耐火被覆材 石綿含有断熱材 | 〇 |
レベル3 | 発じん性が比較的低い (飛散性は低い) | その他の石綿含有建材 (成形板等) 例:石綿含有スレートボード | 〇 |
測定需要と想定するターゲット
アスベスト調査においては、下表のような測定場面を想定しています。
特に、大気汚染防止法の改正によって、建物や船舶等の解体・改修工事の現場での関心が高く、アスベストの含有建材の有無で工期も費用も大きく変わります。
そのような中、本製品を下記のように活用すると、工期の短縮や分析費用の削減が可能になると考えられます。例えば、本製品を使用し、発色があった場合は「みなし含有」と判断し、法律に従ってアスベスト除去工事後に、解体・改修を行ないます。一方、発色がなかった場合はアスベスト「含有不明」と判断して、公定法による分析調査によって、アスベスト含有の有無の確定を行ないます。
製品の特徴
本製品の特徴について長所と短所を簡単にご紹介します。
次に、新旧の製品仕様をまとめました。
本製品の適用範囲と検出範囲、そして反応時間を改善しています。
型式 | DK-ASB(旧仕様) | DK-ASB-2(リニューアル) |
原理 | DPD発色法 | DPD発色法 |
適用範囲 | 石綿含有建材材料レベル1,2 | 石綿含有建材材料レベル1,2,3 |
検出範囲 | クリソタイル含有率2%以上 アモサイト含有率1%以上 クロシドライト含有率5%以上 | 石綿(6種類)含有率2%以上 |
反応時間 | 10分直後 | 5分直後 |
入数 | 20回 | 20回 |
価格 | 13,200円(税抜12,000円) | 13,200円(税抜12,000円) |
有効期限(工場生産月より) | 14か月 | 16か月 |
測り方が異なりますので、ご使用の際は、必ず製品に同梱の使用法をお読みください。
製品取扱いの注意点
・本製品では、簡易分析製品です。大気汚染防止法で定める事前調査、石綿障害予防規則で定める測定および行政への報告には本製品の結果は使用できません。
・発色がない場合でもアスベストの非含有を示すものではありません。また、発色があった場合でもアスベスト含有を最終確定するものではございません(建材中の石綿及び石綿をその重量の0.1%を超えて含有しないことの最終確定には使用できません)。
・現場での調査で使用する際、アスベストが飛散する可能性があります。サンプリングや調査の際は、必ず適切な保護具を着用の上、アスベスト飛散防止対策を講じて作業してください。
公定法と簡易法を上手に組み合わせた管理方法を各社で作成し、アスベスト飛散防止対策を確実に行なう中で、管理負担の軽減、コスト抑制に本製品をご活用いただければ幸いです。
関連情報
- アスベスト検出キット(2022年5月9日販売)
参考情報
※1 中央環境審議会大気・騒音振動部会 石綿飛散防止小委員会(第1回)資料4(抜粋)
※2 石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル[2.20 版] 厚生労働省(平成30年3月)