河川等の水質事故における簡易分析の活用事例

事例紹介 製品情報

河川などで水質異常が発覚した際、速やかに原因調査や河川流域環境への影響調査を実施する
ことで、生じる被害を最小限にする必要があります。そのためには関係機関(行政・原因者)との
連携や迅速な判断、対応が求められます。

事故の起きている現場では、原因物質のスクリーニングの手法として簡易分析器が導入されて
いますのでご紹介します。

国土交通省水質連絡会編集の水質事故対策技術によると「水質事故」とは、人為的に発生する異常
水質と定義され、河川などの公共用水域に、工場設備の破損・故障や誤操作、あるいは不法投棄等に
起因する油類や化学物質が流出する事故を指します。

水質事故はどうやって発覚するの?
水質事故が発覚する経緯には次のようなケースがあります。

1.河川流域住民からの通報
河川周辺で暮らす人々は、身近な河川の変化に敏感です。
河川の表面に油膜が張っている、河川の色がおかしい、濁っている、異臭がする、魚が大量に浮いている、
不法投棄など、異常があった場合に市や警察署へ通報するケース。

2.事業所等からの事故連絡
事業者や工場において、何らかのトラブルや操作ミス、工場設備の破損・故障によって、使用・貯蔵・
廃棄をする化学物質が誤って環境中に流出していることが判明し、自ら関係機関に通報するケース。

3.水道原水の水質検査で異常の発覚
水道事業者が異常を感知し、関係機関に通報するケース。

4.交通事故による流出
自動車や船舶などによる交通事故において、事故現場から燃料や積載していた化学物質が、下水道や
公共用水域に流出したため通報するケース。

河川の水質事故
河川において、突発的な水質事故は、いついかなる時に発生するか分かりません。

水質事故時の行政の基本方針は、「河川環境への影響を最小限にすること」です。
そのため突発的な水質事故に備えて、あらかじめ水質事故対応マニュアルを策定し、万が一、事故が
発生した場合でも、発生直後から迅速な対応が行なえるように、関係機関(国土交通省、都道府県、
市町村、警察署、消防署等)の役割や連携体制について取りまとめられています。
例えば、国土交通省水質連絡会の「水質事故対策技術」や社団法人日本水道協会の「突発水質汚染の
監視対策指針等」などの書籍では、河川水質事故対策に関する報告が丁寧に記述されておりますので、
ご参考になるかと思います。

実際の水質事故の原因物質の分類は、8割を油類の流出によるものが占め、次に化学物質が続きます。
ひとたび、油類や化学物質が公共用水域(河川等)へ流出してしまうと、魚などの水生生物に影響を
与える(魚のへい死等)だけでなく、事故の規模や原因物質によって、水道水原等の取水が制限される
など、広範囲にわたって我々の暮らしに重大な影響を及ぼすことが懸念されます。

水質事故の対策では、事故が発生した場合、原因物質の迅速な特定が急務です。
原因物質を調査する方法の一つに、「水質検査」があります。突発的な事故の場合、一過性であることが
多いため分析精度を犠牲にしても迅速性や簡便性、現場でできることが強みの簡易分析は、緊急時に
おいては特に重要とされています。
(ただし、原因者を特定し、行政処分を行なう場合や、公定法による正式な水質結果を得るためには、
分析機関(計量証明事業所等)への依頼が必要となります)。

事故が起こっている現場では、まず目視確認によって情報を収集します。
次にその情報をもとに、現地で水質の簡易分析(簡易測定)が行なわれます。
さらに、その簡易分析での結果の確認と、より精度の高い結果を得るために、現地で採水した水を分析
機関において精密分析を行ない、最終的な原因物質の特定が行われます。
ここでの簡易分析は、水質事故の現場で迅速に有害物質の当たりをつける際、スクリーニング法として
重要な役割を担っています。
詳しくは、官公庁や自治体のHPで掲載されていますので検索してみてください。

例.
水質汚染事故対策マニュアル策定指針(厚生労働省)
有害物質等流入事故対応マニュアルについて (国土交通省)

ここでは、2000年(平成12年)にO市で発生した事故での実際の行政の対応事例を紹介します。

化学物質による水質事故の原因物質として、シアン、酸・アルカリ類、重金属類等(六価クロムほか)に
よるものが多く発生しています。
これらの化学物質の流出は、先に触れたように工場等で使用する機械や設備の故障、操作ミス、事故、
不法投棄などによるものがあります。
事故が速やかに発覚できれば、河川に設置する水門等の操作によりせき止める対応も可能となります。
本川へ流出してしまった後では、回収が困難であり、希釈以外に有効な対応がない状況となります。

事故の原因物質(項目)製品名原因別推定発生源
シアンパックテスト シアン(遊離)鍍金工場、熱処理工場、汚泥等焼却事業所等
フェノール類パックテスト フェノール消毒薬使用事業所(畜舎、病院)等
六価クロムパックテスト 6価クロム有害・有毒物質の混入、工場排水の流入等
ひ素パックテスト ひ素(低濃度)セット有害・有毒物質の混入、工場排水の流入等
パックテスト 銅有害・有毒物質の混入、工場排水の流入等
残留塩素パックテスト 残留塩素消毒剤使用事業所、酸化剤使用事業所、漂白剤使用事業所等
アンモニア態窒素パックテスト アンモニウム冷凍施設、肥料、化学薬品製造工場、生下水、し尿の流入等
pHpH試験紙PLS酸・アルカリの表面処理業、工場排水の流入、藻類の大量発生等
例.事故の原因物質と簡易分析の組み合わせ
本表は、書籍 東京都環境局 水質異常事故対応マニュアル(平成24年3月)P19および社団法人日本水道協会 突発水質汚染の監視対策指針(2002)P90の加筆修正による。

異常時や非常時に備えて、簡易分析器を常時保管し、いざという時に使用いただけますが、パックテスト
には製品として有効期限がありますので、定期的に有効期限を確認し、スクリーニングのお役に立てれば
幸いです。

追記.
令和4年3月、環境省より”大規模な地震や豪雨など災害の発生に起因する化学物質の漏洩・流出などの事故が発生する可能性が高まっていることから、地方公共団体環境部局の災害・事故対応を更に充実、強化していくことを目的として、「地方公共団体環境部局における化学物質に係る災害・事故対応マニュアル策定の手引き」が策定されました”(一部抜粋)。
この手引きにおいて、原因物質の究明・初動対応として、パックテストも一例として紹介されております。
環境省_「地方公共団体環境部局における化学物質に係る災害・事故対応マニュアル策定の手引き」の公表について