お酒とグルコース濃度

コロナ禍と日本酒

日本酒の仕込みが本格的に始まる、寒造りの季節がやってきました。本来なら、これから忘年会シーズンに入り、街は賑わい、仲間と美味しい料理とお酒を愉しむ。ほろ酔いの中、会話も弾む、そんな平穏な日々が今となっては懐かしく、待ち遠しい限りです。

新型コロナウイルスの感染拡大により、飲食業界は営業自粛や時短営業を余儀なくされ、また、我々消費者も外食する機会が減り、外食需要にとっては大きなダメージとなりました。一方で、外出自粛に伴い、家飲みにシフトしたことで、比較的にリーズナブルなお酒が人気となっています。
ともあれ、お酒が消費されないことには、多くの酒蔵にとって、仕込んだタンクのお酒や調達した原料米が余るなど様々な問題が生じていることも事実です。

日本酒ブーム

日本酒は、国内だけでなく、和食ブームとともに世界中に広がっています。
利酒会や酒蔵見学、旅先で地酒に出会う、様々な料理とのマリアージュなど多種多様な愉しみ方も増えています。
近年は、遠方までいかなくても、日本酒専門のバーや居酒屋も増え、全国の多様なお酒に出会う機会もぐっと身近になったことで、その味や香りの違いを感じながら飲み比べをした経験もあるのではないでしょうか?
そんなたくさんの機会から自分好みのお酒に出会う人も多いようです。

多様化する酒造りにおける品質管理

日本酒の味を示す指標として、日本酒度、酸度、アミノ酸度が一般的に用いられますが、今回は、酒造りの「もろみ」管理の指標の一つとして、注目されるグルコースについてお話します。

日本酒(清酒)は、酒税法において「米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの」や「米、水及び清酒かす、米こうじその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの」と定義されています。

現在、国内には酒蔵がおよそ1,600社近くあります(令和2年国税庁課税部酒税課 お酒のしおり)。
日本酒造りの製造工程は、ワインやビールなどの他の醸造酒に比べて複雑なことをご存じでしょうか。日本酒造りの特徴は、「並行複発酵」と呼ばれる醸造法にあります。

糖化:原料のお米(主成分のでんぷん)を、麹菌のもつ酵素を用いて糖(グルコース)に分解する
アルコール発酵:分解された糖を酵母が餌にしてアルコールと二酸化炭素に変える

この糖化とアルコール発酵を一つの容器の中で、同時並行的に行わせる発酵方式が日本酒の特徴です。
近年は、新たな酒造りとして、杜氏の経験や勘による伝統技術に加え、さらに数値管理を組み合わせながらお酒の美味しさや品質を追求する話も良く聞きます。
日本酒は原料となる水が良いことはさることながら、その製造工程における発酵や発酵後の搾りのタイミングは、日本酒の味を左右するため、ひと手間加えてでも品質管理に力を入れる酒蔵も増えています。

前述のとおり、日本酒は並行複発酵という技術を用いており、美味しいお酒を造るためのもろみ(発酵)管理には、酒造りを行なう期間、杜氏の経験と日々の測定データが欠かせません。

グルコース濃度に注目してみると、もろみの初期に上昇し、グルコースがアルコールに変わっていくにつれて減少し、終盤は落ち着いていきます。

そのような濃度の推移を観察することで、もろみの状態を客観的に把握したり、絞りのタイミングを決めるのに役立つ指標であると考えられています。
さらに、グルコース、つまりブドウ糖は、簡単に言えば、多く含むと甘みを感じ、少なくなると甘さが減っていくといった味の目安となります。つまり、絞りのタイミングのグルコース濃度を把握することによって、出来上がるお酒の甘みに大きく影響を与えることが分かるかと思います。

銘柄によってグルコース濃度は異なりますが、独立行政法人 酒類総合研究所が行なう平成30酒造年度の全国新酒鑑評会に出品されたお酒のグルコース濃度は、0.5~5.5%(平均2.49%)、そのうち上位酒(金賞受賞酒)では1.4~4.4%(平均2.74%)と報告されており、上位酒の方が全出品酒より、グルコース濃度がわずかに高い傾向にあります。
(独立行政法人 酒類総合研究所 酒類総合研究所報告 第192号 No.192-01より)

グルコース簡易測定法

パックテストは、簡易分析であるため国税庁所定分析法で定められる公定法ではありません。
しかし、概略値でも良いので毎日グルコース濃度の推移を管理したいという要望から、2018年9月、パックテスト グルコースおよびデジタルパックテスト グルコースを販売開始しました。

また、同年の秋には、秋田県杜氏酒蔵講習会の中で、秋田県総合食品研究センター醸造試験場によって、他社の測定器とパックテストの性能比較がされ、ほぼ同等の結果が得られることが報告されたことを機に、徐々に利用される酒蔵が増え始めました。
測定方法は、弊社技術資料「酒中のグルコース測定」を参照ください。

現在の日本酒の主流は、全国新酒鑑評会でも「フルーツのような華やかな香りとすっきりとした味わい」が特徴の吟醸酒が人気と言われています。近年では、吟醸酒を展開している酒蔵も増え、より美味しいお酒を目指し、品質管理を強化されているようです。
少しでも酒造りの工程で、客観的な数値管理の指標として、我々の製品が貢献できれば幸いです。

年末年始、ステイホームしながらご自宅で気に入ったお酒のグルコース濃度を調べてみるのもいつもとちょっと変わった楽しみ方になるのではないでしょうか!?

名称地域グルコース濃度 %
純米吟醸新潟1.72
純米吟醸高知1.52
純米石川1.60
本醸造秋田1.96
本醸造生貯蔵広島2.68
表.パックテストを使った日本酒の測定(例)

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